『アイデアだけは、バーゲンセールしてもいいくらいあるんだ。』 - 手塚治虫

創造士AI | AIを考える Vol. 0002「そもそもAIとは何?」

SoZoShi LLC., AI Article #0002 What is AI?

2022年秋、OpenAIによるChatGPTの一般公開を機に、生成系AIの利用が爆発的に拡散しました。自然言語を用いて人と会話するかの様に指示するだけで、当初は文章および画像くらいしか実用レベルでなかったものが、今となっては動画や音楽などといった様々な生成が可能となり、数年前であれば想像も出来なかった風景が広がっていると思います。

しかしながら、これほどの拡散が想像を絶する速度で実現している現在、「そもそもAIとは何なのか」という根本的な理解をする間もなく使用している方もいらっしゃるかと思います。そこで、今回は分かりやすくAIを説明してみたいと思いますので、ぜひご参考としてください。

AIとは?

Artificial Intelligenceの略であるAI、訳せば人工知能は、それこそSF小説や映画などと言った作品で頻繁に使われるプロップです。人の営みをサポートするロボットや世界を統制する中央コンピューターなど、時によっては人類と共存し、時によっては相反する姿を我々はフィクションを通して何度も目にしてきました。しかしながら、実際に顕在化すると改めてAIが何なのかが不確かになりがちです。

OpenAIのChatGPTやGoogleのBardなど、大規模言語モデルを使用した経験があれば、ユーザーの自然言語に近い指示で思いのほか高品質な出力が生成された時の驚きは、それこそAI時代の到来を感じさせるに十分な体感なのかもしれません。しかしながら、指示の理解と生成物の驚愕せざるを得ない品質の高さはAIの本髄ではなく、あくまでも学習を人為的に止めたモデルに入力および出力インターフェースを付加したエンドプロダクトに過ぎません。

ではAIとはなにか。分かりやすさを優先するために若干乱暴な説明をすると、それは人の手が介在せずに自身の判断で行動することが出来るプログラムであること、これこそが真髄です。要するに、行動する為の指示を外部から逐一入力せずとも、状況を踏まえて自己判断で行動できるソフト、となります。

自動化とAIの違いは?

ユーザからの指示を必要とせずに行動するプログラミングの代名詞はオートメーション、つまり自動化ですが、一見するとAIも自動化なのでは、と思いがちです。しかしながら、それは似て非なるモノです。

自動化をするために必須となるもの、それは自動で一連の行動を実施する為に入力される命令文です。これが従来のプログラムであり、ソフトが行動するための全指示が記載されています。それを入力して構築するのがプログラマー、要は人です。なので、もしプログラム上にて明記されていない事象が起きた場合、プログラムは停止し、修正作業を人が実施します。

AIはどうかと言うと、確かに最初の指示は人から入力されるものの、あくまでもデータの全般的な学習方針のみを与えられた上で大量のデータを渡され、各情報の関係性を整合性確率として記憶、各情報の関係性が相対的に濃いか薄いかを自己判断した上で自身の行動指針を作り出して行動します。つまり、外部からの指示がなくとも手元にある情報を元に自ら判断を下し、動くことができます。

言語学習に例えると

言語学習を例とすると、より分かりやすいかと思います。言語を学習する場合にあるととても便利なモノ、それは辞書です。例えば「魚 = fish」といった単語の定義を必要と思われる分だけ記載して一つの書物にまとめた、いわばルールブックです。そしてこのルールブックを憶え、その内容を組み合わせる事によって言語を習得します。この辞書という便利アイテム、言語学習において必須とも言うべきツールですが、既存の演算システムが「定義」を提示されなければ動けない点は、辞書が無ければ言語のルールが分からない状況と似ています。

では、実際に辞書が無く、人に聞けない場合はどうするのでしょうか?ナポレオンのエジプト遠征時に発見されたロゼッタストーンとその解読、と言えば既にピンと来る方もいると思いますが、要は複数の異なる言語で書かれた同様の内容を比較することで各単語がそれぞれの言語のどれに呼応するかを分析して学習します。端的に言えば、自ら辞書を作ることによる言語学習の究極形態とも言うべきでしょうか。実は、これがAIです。

正にそれを体現した事例がGoogleによって開発されたPaLMで、人が介在した上で数年かけて最初に学習した言語は英語のみだったにも関わらず、その数か月後には「勝手に」ペルシャ語を理解するようになりました。大規模言語モデルによっては現在は50言語以上での会話が可能でありながらも、その学習過程は最初の英語以外が全て「独学」であったという事実は、旧態依然の理論エンジンでは実現が不可能と言われています。

 AIの特徴

自身が判断し、外部からの指示がなくても行動できるAIには今までに見られなかった特徴が数点あります。一つは学習においてのブラックボックス化で、厳密になぜAIがこのように行動できるのかと問われると実は説明が出来ないという事実です。また、異なる情報の相関図を膨大なコンビネーションを試す上で作成し、整合性の確率が高い道筋を通って結果を出す点は、ロジックのみで構築された今までの演算とは大きく異なります。そしてもう一つ大きな特徴が、学習するための資料となる新たなデータが供給される続け、外部からの停止命令が出ない限りAIは学習し続ける点です。

仕組みが明確に分からず、ロジックではなく確率をベースとし、学習し続ける電子演算ソフトウェアであるAI。このようなシステムが人と自然言語を介して双方向コミュニケーションを既に大規模な範囲で実施している現状は、AIに自我が芽生えようと芽生えなかろうと、世界に変革を齎す中心的要素と言っても良いのではないでしょうか。

 ※イメージ画像は生成系AIによって生成されたものとなります。